【虹彩Vol.40 Web版ページ】ドクターのお話
肩の痛み 腱板断裂の治療

教えて!ドクター
腱板断裂の治療
人間の関節で一番大きく動いているのが肩の関節です。肩の痛みや動かしづらさといった症状で悩まれている方は多いのではないでしょうか。日常生活に大きく支障をきたす肩関節疾患について、整形外科医の松尾洋昭先生におききしました。
松尾 洋昭 整形外科医

Matsuo Hiroaki

肩について
肩は、3つの骨(鎖骨・肩甲骨・上腕骨)と、3つの関節(胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲上腕関節)で構成されます。一般的に肩関節とは、肩甲上腕関節を指すことが多いです。
肩甲上腕関節は、全方向に運動が可能な球関節です。人体で最も大きな動きができる関節である半面、脱臼しやすい関節でもあります。肩関節疾患の多くはこの球関節を安定させている軟骨や靭帯、腱板や周囲筋などの損傷などにより生じます。
腱板断裂
腱板とは、上腕骨頭を取り囲むように覆っている四本の筋肉の腱のことを指します。 腱板は肩甲骨関節窩というお皿に上腕頭骨を安定させる役割を担っています。 この腱が切れるのが腱板断裂です。

腱板断裂

【症状】
  • 運動痛・夜間痛
  • 肩を動かすとゴリゴリと音がする(軋轢音)
  • 肩に力が入らない
【原因】
  • スポーツや事故等による外傷
  • 腱板の老化
【治療】
  • 鎮痛剤の内服・外用
  • 注射・リハビリ
  • 手術
腱板断裂には症状のある症候性断裂と、症状のない無症候性断裂があります。腱板断裂の約3分の2は無症候性断裂です。夜間痛や筋力低下、引っ掛かりや手が上げにくいなどの症状がある場合は、まずは内服や外用、注射などで治療を行っていきます。このような治療で症状の改善がみられない方には、年齢や断裂の状態などを検討し、全身麻酔下で関節鏡を用いた鏡視下腱板修復術を行っています。

手術治療

腱板断裂の手術は全身麻酔下で座った状態で行います。肩を数か所切開し、関節鏡や専用の器具を挿入して断裂した腱板を確認します。断裂部や腱板の付着部をきれいにクリーニングした後、専用の杭を上腕骨頭に挿入します。杭から連続する高強度糸を腱板に通し、この糸で上腕骨に腱板を縫合し修復します。

術後の経過

手術後は修復部分に安静が必要なため、肩を自分で動かさないよう装具を用いて固定します。肩外転装具と呼ばれる専用の装具を約4週間〜6週間装着し、リハビリテーションにて可動域訓練などを行っていきます。

復帰の目安

  • 通常の日常生活を行えるようになるまで術後約2カ月半程度
  • 重い物を持つ等の重労働を行えるようになるまで術後半年程度
その他の疾患 肩関節拘縮

肩関節拘縮

【症状】
  • 強い痛みがある
  • 肩が動かしにくくなる
【原因】
  • 糖尿病、高血糖
  • 外傷や変形
  • 加齢
【治療】
  • 鎮痛剤の内服・外用
  • 定期的な関節内注射
  • ストレッチ・リハビリ
  • 手術
肩関節拘縮とは、肩の動きが悪くなり可動域が狭まる、痛みがあるなどの疾患です。いわゆる四十肩・五十肩と言われる疾患も症状が強くなるとこの病態になってしまいます。内服や注射、ストレッチなどで治療を行いますが、これらの保存的加療を3カ月〜半年程度行っても症状改善がみられない場合は、手術による治療を検討します。

手術治療

局所麻酔薬による神経ブロック注射を行い、肩関節に力を加え動かすことで可動域を広げる徒手的授動術を行います。希望がある場合は、全身麻酔を行い鏡視下全周性関節包解離後に授動術を行います。授動術を行うことで、すぐに疼痛が改善されることはなく、可動域訓練などを継続し、リハビリテーションによる治療を行っていきます。
おわりに
腱板断裂で生じた断裂は元に戻ることはなく、断裂のサイズは徐々に大きくなっていく可能性もあります。また、肩関節拘縮や腱板断裂の他にも、肩の痛みを伴う疾患は多岐にわたります。腱板に石灰が沈着し炎症を起こす場合や、頸椎が原因で痛みが出る場合もあります。仕事で重いものを持つ、事故やスポーツによる外傷などのはっきりとした原因がなく、日常動作の中で肩を痛めてしまうことも多いです。肩の痛みが持続する場合は、早めの受診をお勧めします。
ドクター紹介

整形外科医

松尾 洋昭
Matsuo Hiroaki
肩の痛みの原因はさまざまです。痛みや違和感を感じたら無理をせず、早めに病院受診をすることが大切です。気になる症状や疑問に思うことがありましたらお気軽にご相談ください。
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