【虹彩Vol.33 Web版ページ】ドクターのお話 狭心症と心筋梗塞

教えて!ドクター
寒い冬場は
狭心症と心筋梗塞
にご注意を!
毎年10月から4月頃にかけて心筋梗塞の最重症型である心停止の発生が多いことが、国立循環器病研究センターの調べにより解析されています。寒い冬場に特に注意が必要とされる「狭心症」と「心筋梗塞」について、循環器内科医 迫 稔先生にお話をお伺いしました。
迫 稔 循環器内科

Hazama Minoru

冬場に多い
狭心症と心筋梗塞
上のグラフは心筋梗塞などの心原性心停止の発症率の推移を月毎に示したものです。肌寒くなる10月頃から増え始めて、寒冷期である12月から1月に最も発症率が増加しています。
寒くなると、体は血管を収縮させて、体温が下がりすぎないよう調節しています。健康な状態では、血管壁もきれいで血行も良好ですが、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙、加齢などが原因で動脈硬化を起こすと、狭くなった血管の内側に、お粥のようにドロドロとしたプラークと呼ばれる物質がたまって盛り上がり、血行を悪くしたり石灰化をおこしたりします。
動脈硬化が進むと、心臓の筋肉に酸素や栄養を供給している「冠動脈」と呼ばれる血管が狭くなり、心臓に十分な血液が運ばれず、胸を締め付けるような痛みが生じます。これが「狭心症」です。
また、冬場に暖かい部屋から急に寒い場所に移動すると血圧が急激に上昇し、心臓はより強い力で全身に血液を送り出そうとします。その勢いによって血管内のプラークを覆っている膜を破り、プラークに血液が付着して血栓ができてしまうと、血管が詰まり血流が完全に途絶して心臓の筋肉が壊死する「心筋梗塞」が起こります。激しい胸痛が10分以上持続し、死の危険にさらされる大変危険な状態です。
狭心症の早期発見や
心筋梗塞の発症を
防ぐには
これまでは、レントゲンを見ながら、手首や太ももなどの動脈から心臓周辺の冠動脈入口まで「カテーテル」という細い管を入れて、カテーテルを通して造影剤を注入し冠動脈を造影する「心臓カテーテル検査」による冠動脈造影検査が主流でした。
しかし、現在ではもっと手軽に行える検査として、X線を照射し心臓の撮影を行う「冠動脈CT検査」が行われています。従来のカテーテルを使用する冠動脈造影検査は入院が必要でしたが、冠動脈CT検査は、手足の動脈や冠動脈に直接カテーテルを入れる必要がなく、出血や血管を傷つけるリスクが少ない非侵襲的な検査であるため、外来での検査が可能です。
上の図は「心臓カテーテル検査」と「冠動脈CT検査」による冠動脈の様子を比較したものです。
冠動脈CT検査では、冠動脈に狭窄がないか、血管にプラークがたまっていないかを一目で判断することができます。また、立体的でより細かい画像を撮影できるので、プラークの位置や量、冠動脈狭窄の程度を正確に把握することができます。
冠動脈に狭窄が
みられた場合は
冠動脈に高度狭窄を認めた場合は心筋梗塞を起こしてしまう前に、バルーンで拡張させた血管にステントを挿入することによって血管が拡張した状態を保つ「冠動脈ステント埋め込み」や、狭くなった血管の先に移植した血管をつなぎ新たな血液の流れをつくる「冠動脈バイパス手術」を受ける必要があります。
狭窄が高度でない場合でも、プラークの進展をおさえるため、悪玉コレステロール値や血圧、血糖などの冠動脈危険因子を厳密にコントロールしていくことが必要です。
予防のためには
 狭心症と心筋梗塞の予防のためには、動脈硬化を進行させないことが重要です。動脈硬化は、「高血圧」「高脂血症」「喫煙」「肥満」「糖尿病」などの危険因子をより多く持つ人ほど、その進行が早まることがわかっています。
危険因子を減らすためには、食事、運動、睡眠など日々の生活習慣の改善が必要ですが、そのためには、現在のご自分の体の状態を正しく知ることが不可欠です。血圧やコレステロール値、中性脂肪値などが高めの方は、まずは病院を受診し、病気のリスクを理解したうえで、改善に取り組みましょう。
動脈硬化の危険因子の有無を調べるチェック項目
  1. 1.血圧
  2. 2.空腹時の血液中の脂肪【総コレステロール値・HDL(善玉)コレステロール値・トリグリセライド(中性脂肪)値・LDL(悪玉)コレステロール値 など】
  3. 3.空腹時血糖、HbA1c
  4. 4.喫煙歴
  5. 5.血液の尿酸値
  6. 6.身長・体重・ウエストとヒップの周囲径の計測
ドクター紹介

内科医

迫 稔
Hazama Minoru
高血圧の方、コレステロール値が高い方、タバコを吸われる方、糖尿病の方などで、胸痛や胸部不快、動機や息切れなどの気になる自覚症状がある方や、心電図で虚血性変化や異常Q波などを指摘された方は、一度、冠動脈CT検査を受けることをお勧めします。 お気軽にお問い合わせください。
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