【虹彩Vol.32 Web版ページ】ドクターのお話 膵がんについて

教えて!ドクター
膵がんについて
最近、著名人が膵がんを患っているという報道をよく耳にしませんか?
何やら怖い病気のような気がしますよね。
今回は膵がんがどのような病気かご紹介します。
柴﨑 信一 外科

Shibasaki Shinichi

膵臓って
どんな臓器?
膵臓の位置
膵臓は胃の背中側に横たわる長さ15㎝程度の臓器で腹部の奥深くにあります。
周囲には胃、十二指腸、小腸、肝臓、胆嚢、胆管、脾臓などの臓器があります。


膵臓の機能


外分泌機能
消化液を十二指腸内に分泌し、食物の消化吸収をおこないます。
消化液の中には消化酵素として炭水化物分解酵素であるアミラーゼ、脂肪の分解酵素であるリパーゼ、蛋白質の分解酵素であるトリプシンを含みます。


内分泌機能
ランゲルハンス島で血糖値を上げるインスリン、血糖値を上げるグルカゴンと呼ばれるホルモンが作られ血液中に分泌されます。
内分泌機能が低下すると糖尿病の発症、悪化が起こります。


膵がんって
どんな病気?
膵がんとは


膵がんとは、通常、膵臓の中の膵管から発生して周囲に広がっていく浸潤性膵管がんを指します。
膵管の異型上皮由来の発がんと考えられており、早期より線維性間質と神経周囲への浸潤を特徴とし予後不良とされています。

一方、膵がんには膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)も含まれ、こちらは良性である腺腫から粘膜内がん、微小浸潤がん、浸潤がんへと徐々に変化していくことが知られています。
膵管外に浸潤すると通常の膵がんと同様に悪性度の高いがんとなりますが、深部浸潤傾向が少なく、がん化していても長期に膵管内の増殖にとどまっていることが多いため、比較的予後が良い膵がんといわれています。

一般的には膵がんといった場合、前者の浸潤性膵管がんを指します。


膵がんの症状
膵がんには特有の症状はなく、腹痛、黄疸、腰背部痛、体重減少、糖尿病の悪化、食欲不振などがあります。
症状がないこともあります。


膵がんの特徴
① 早期に症状があらわれにくい
② 周囲には肝臓、胆道、十二指腸などの重要臓器や門脈、肝動脈などの重要な血管がある
③ 浸潤・転移しやすい傾向がある
④ 外科手術だけが唯一完治を期待できる治療法である


膵がん患者は
増加しているの?
膵がんに罹る人の数が男女ともに増加する傾向にあります。
生活習慣の変化、高齢化もありますが、画像診断法の進歩により、これまで発見しにくかった膵がんが発見されるようになってきたことも、膵がん増加の一因と考えられています。それに伴い、膵がんで死亡する人も増加しています。


膵がんの3年生存率

多くのがんでは、診断あるいは治療5年後の生存状況、いわゆる「5年生存率」を治癒の目安としてきておりますが、より早い段階での生存率をタイムリーに観察していくことの必要性が増しているとして、がん診療連携拠点病院等からの2011年診断例の「3年生存率集計報告書」が国立がん研究センターから出されました。膵がんの3年生存率は15.1%で治療困難ながんの一つと言えます。
膵がんはどんな検査
よって
発見されるの?
膵がんの検査


膵がんの検査は主に血液検査と画像診断です。通常、複数の画像診断を組み合わせて行います。
最近では画像診断が発達し、小さい段階での早期発見が可能となってきました。症状、危険因子などから膵がんが疑われると、まずは血液検査、超音波検査をおこないます。
画像診断については原則として非侵襲的な検査からすすめていきます。超音波検査、造影CTで膵がんの診断がつく場合は、それ以上の画像検査は必須ではありません。
膵がんの確定診断が得られないときは、さらにEUS(超音波内視鏡)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)、PETを組み合わせ総合的に診断します。可能な限り細胞診や組織診の病理診断を行い、膵がんの確定診断を得ることが望ましいとされています。
膵がんの
治療方法は?
診断結果に基づき、患者さんの年齢、病状、全身状態を十分に検討し、患者さん、ご家族と相談して治療方針を決定します。
膵がんは外科手術による治癒切除(がん細胞の完全切除)により完治する可能性があります。
がん細胞が残ると予想される場合は切除療法の効果がないので、外科切除はがん細胞を残さず切除が行えると予想される患者さんが対象となります。
治療前の検査で遠隔転移、主要な動脈へ浸潤、膵外神経叢への浸潤、腹膜播種がある場合は、がんの完全切除が難しく手術適応ではないとされています。
手術適応ではないと診断された場合は病変の広がりによって化学療法、放射線療法、あるいは両者を組み合わせた化学放射線療法が選択されます。
膵がんに対する
切除術式
膵がんに対する切除術式は、がんの占居部位(がんが発生した場所)によって決定されます。
膵臓は右側の十二指腸に近い部位から頭部、体部、尾部の3部に分類されます。


膵頭十二指腸切除
膵頭部がんに対して行われる手術法で、膵頭部、十二指腸、胆管、胆嚢を同時に切除します。
残った膵臓、胆管、胃を小腸と吻合し、膵液、胆汁、食物が消化管内に流れるルートを再建する必要があります。




膵体尾部切除
膵体部がん、膵尾部がんに対して行われる手術です。
脾臓に出入りする脾動脈、脾静脈が膵体尾部に近接して走行しており、がん細胞を遺残させることなく、より確実に切除するために脾臓も合わせて切除します。
この場合、膵臓、胆管、消化管は再建する必要はありません。




膵全摘術
膵がんが膵全体に進展している場合に膵臓全体、十二指腸、胆管、脾臓を同時に切除する膵全摘を行います。
この場合は胆管と消化管の再建が必要です。


ドクター紹介

外科医

柴﨑 信一
Shibasaki Shinichi
がん診療連携病院等からの報告によりますと、2011年診断例の膵がんのステージ(病期)別3年相対生存率は全体で15.1%であり、肝臓や肺と同様に予後があまり良くないがんと考えられます。
しかしながら、外科手術の技術向上、有効な抗がん剤の登場、種々の治療法の組み合わせで膵がんの治療成績は向上しています。膵がんについても早期発見・早期治療が必要と言えます。
そのためには定期的に検診を受けることが重要です。
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