【虹彩Vol.29 Web版ページ】ドクターのお話 ウイルス性肝炎について

教えて!ドクター
ウイルス性肝炎って
どんな病気?
2009年の肝炎対策基本法成立後、わが国では、肝炎ウイルス検査の促進、肝硬変・肝がん患者への対応、
国民に対する正しい知識の普及など、様々な肝炎総合対策が進められています。
ここ数年、耳にする機会が多くなった「ウイルス性肝炎」について、当院 消化器内科医の柳 謙二先生にお話を伺いました。
柳 謙二 消化器内科

Yanagi Kenji

ウイルス性肝炎とは
ウイルスに持続感染することによって、肝臓の細胞に慢性的な炎症が起こり、肝硬変や肝細胞がんに至る病態です。
代表的なものに「B型慢性肝炎」「C型慢性肝炎」があります。


感染経路


B型慢性肝炎
主に血液や体液を介して感染します。かつての感染経路は、その多くが母子感染(産道での感染)であると言われていました。
しかし、1986年に母子感染対策事業が始まってからは、母子間での感染は激減しました。
近年では、集団予防接種による注射器の使いまわしによる感染が注目されているようです。
また、性交渉による感染もあると言われています。


C型慢性肝炎
主に血液を介して感染します。
C型肝炎ウイルスが発見される以前の輸血や血液製剤、血液透析を介した医源性感染の他、入墨や覚せい剤の使用歴がある方などに多いと言われています。
日本にはどれくらいの
感染者がいますか?
日本赤十字社血液センターの初回献血者集団の資料をもとに厚生労働省が算出したデータによると、B型肝炎ウイルスに感染していることを意味するHBs抗原陽性者は推定130万人、C型肝炎ウイルスに感染していることを意味するHCV抗体陽性者は推定200万人いると言われています。
HBs抗原陽性率を男女別にみると、男性の方が高い値を示していますが、これは、女性が妊娠などをきっかけに肝炎ウイルス検査をうける機会が増え、陽性者が献血をしていない可能性があるとみられています。
ウイルスへの感染は、
どのような
検査で
わかるのですか?
ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査でわかります。
全身の倦怠感や食欲不振などの症状がみられることもありますが、肝臓は「沈黙の臓器」とも言われるように、初期には自覚症状がほとんどなく、感染に気付いていない方も多いと考えられています。
現在治療中の方も、大半は血液検査や検診等で感染が明らかになっています。
ですから、まだ検査を受けたことがない方は、ぜひ一度検査を受けることをおすすめします。


検査を受けた方がよい方


a.これまでB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス検査を受けたことがない方
b.ご自身のB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス検査の結果をご存じでない方
c.ご家族にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスに感染している方、肝がんの患者さんがいる方
d.健康診断の血液検査で肝機能検査(AST(GOT)、ALT(GPT))の値の異常を指摘されたが、まだ医療機関を受診されていない方
e.母子感染予防策が実施されていなかった1985年(昭和60年)以前に生まれた方
f.輸血や大きな手術を受けた方
g.入墨(タトゥー)を入れたり、医療機関以外でピアスの穴をあけたことがある方

※ 肝炎情報センターHP肝炎ウイルス検査マップ参照
肝炎の進行の程度
ウイルス性肝炎は、そのまま放置すると、肝臓の線維化が進展し、肝硬変や肝がんなど、より深刻な病気につながってしまう恐れがあります。
線維化度は時間の経過とともに、軽度(F1)、中等度(F2)、高度(F3)、肝硬変(F4)の順に進み、進展すればするほど発がんの危険性が高くなりますので、早期に発見して治療を始めることが大切です。
肝炎には、どのような
治療法が
ありますか?
慢性肝炎の治療法には、ウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス療法と、肝炎の悪化を防ぐ肝庇護(かんひご)療法の2つがあります。


B型慢性肝炎
かつては、ウルソ内服や強力ミノファーゲンなどの肝庇護薬やインターフェロンが投与されていましたが、2000年から核酸アナログ製剤が投与されるようになりました。このところの治療導入症例では、テノホビルが多く用いられています。


C型慢性肝炎
以前は、肝庇護薬やインターフェロンの投与が行われていましたが、2014年からDAAsが投与されるようになりました。近年では、1型にNS5A阻害剤とNS5B阻害剤の合剤、2型にNS5B阻害剤とリバビリンを投与するようになり、95%以上の方が治癒すると言われています。
医療費の
助成について
治療にかかる薬剤費、診察費、入院費などの自己負担額を、月額1万円または2万円(所得に応じて異なる)を上限とする公的な医療費助成制度があります。
自治体や治療法によって助成期間等が異なりますので、詳しくは当院のソーシャルワーカー、都道府県の窓口、最寄りの保健所などにお問い合わせください。
ドクター紹介

消化器内科

柳 謙二
Yanagi Kenji
近年、ウイルス性肝炎の治療は進歩しており、B型慢性肝炎は、ほぼすべての方が肝機能の正常な状態を長期間維持し、肝炎の進行を強く抑制できるようになりました。C型肝炎についても、95%以上の方が治癒する時代となっています。
早期発見のために定期的な検査を受けましょう。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
お電話でのお問い合わせ
【休診日】第2、第4土・日・祝及び12/30~1/3(※緊急患者は24時間診療いたします。) 疾病や治療法についてのお問い合わせは、お電話ではお答えできかねますので
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